2007年06月29日

夏の宿泊学習

聞いた話だ。いまは宿泊施設になっている廃校になった海辺の小学校があった。そこで、とある中学校の夏の宿泊学習が行われた。
学習と言っても海水浴をして自分たちでご飯を作るキャンプみたいなものだ。
初日はわいわいと楽しく過ごしたのだが、2日目になって事件が起こった。
同じ施設を利用していた小学生の団体のひとりが海で溺れ死んだのだ。
その男子児童の遺体は夕方になって発見され引き上げられた後にかつての校長室で検死が行われた。
霊柩車の手配が遅れたらしく翌朝に運び出すまでそのまま安置されることになった。
小学生たちはその日のうちに引き上げてしまい、その元小学校の宿泊施設には中学校の生徒たちだけが残された。
別の団体の事故とは言えそれまで楽しかった空気が一変した。しかも死体が同じ屋根の下にあるのだから落ち着かない。
線香の匂いが開け放たれた窓から漂って来る。
しかし何処にでもバカはいるもので、「死体のある校長室まで行ってみようぜ」と言い出すヤツが出て来た。
名乗りを上げたのは3人で、いずれも頭より腕力というタイプの校内でも腫れ物の様な扱いを受けてる問題児たちだった。
きっと勇気があるところを誇示したかったのだろう。
3人はクラスの男子生徒にあてがわれた大部屋を抜け出して校長室へと向かった。
元小学校の建物は木造の2階建て古いモノで校長室は1階の端にある。
3人は教師に見付からないようにコソコソと廊下を走り抜け階段を降りた。
1階の廊下は思っていた以上に暗かった。
それでも引き返すに引き返せない3人は壁伝いに廊下を進む。
「おい」
先頭を歩いていた男子生徒が立ち止まった。
「誰か来るぞ」
暗い廊下の先を指差して小さな声で後ろの2人に囁いた。
「嘘だろう?」
この時間は教師を含めて全員が建物の2階にいる。
1階は本当はもう一泊する事になっていた小学生たちに割り当てられたスペースだったからだ。
遺体にも同じ部屋で付き添っている人間はいない。
「本当だって」
大声を上げそうになったがそれだけは何とか我慢した。
「だって足音がするぞ」
「……まさか」
後ろの2人も逃げ出したいのをこらえつつ耳を澄ました。
確かに廊下の暗闇の向こう側から音がする。
チタッ、チタッ、チタッ、チタッ……。
それは水滴が床に落ちる音に似ていた。
「……本当だ」
濡れた裸足で廊下を歩いている音だ。
3人は逃げ出そうとしたが足がすくんで動かない。
足音がどんどん近付く。
非常灯の明かりに人影が見えた。
青白い肌の海パン姿の小学生の男の子。
目が青く光って笑っていた。

1階の廊下で泣き叫んでいる3人を教師が見付けたのはその直後のことだ。

posted by 猫柳まんぼ at 13:50| Comment(0) | TrackBack(0) | 怖い話
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